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ビジネスインタビュー:2020年2月17日

企業の採用支援から社内研修、面談の支援まで、人材・人材育成に関するコンサルタントとして幅広い活躍をみせる張田麻衣音。
現在は、企業の研修講師や採用コンサルタントの他、新卒就活生向け講座の講師として登壇する機会も多い。

大学では、就活や就職を控える学生に向けてのビジネスマナーやビジネススキルなどを教えることはもちろん、企業と大学を繋ぐための講座や、働くとは何かというキャリアを考える講座まで、教える内容も幅広く深い。

どちらも一貫しているのは、“社会で自立できる人を育てる”ということ。張田がこの道を選んだのは、必然であった。

最初に務めたのは求人広告の営業事務。事務といっても、広告の原稿を書き、キャッチコピーを考えるなど、営業をサポートしつつも現場に近い仕事が殆どだった。
時は丁度紙からデジタルへと移行する大きな転換期でもあり、通常業務に加えデジタル移行業務も平行して行なっていた張田は、とにかく忙しい日々を過ごしていたという。
そしてIT化が完了すると事務としての仕事は減少し、今度は全社的な業務の平準化や社員教育などを任されるようになった。業務の平準化と一言で言っても、それは並大抵の業務ではなかった。
なぜなら関東6カ所にあった営業所は社としてのマニュアルが存在せず、営業所ごとに独自のやり方が出来上がっていたのだ。それは「営業が異動をすると別会社に転職したのではないかと思う程、各営業所でオリジナルのカラーが出来上がっていましたね」という張田の言葉どおり。それぞれの営業所の良いところを取り入れたいけれど、売り上げを競っていたこともあり、横の繋がりもない。

入社後すぐ辞めていく人も多く、人の出入りも激しかったため、業務の引継ぎはほぼ全てが口頭で行なわれていた。この状態で業務を平準化させるには、まずはマニュアル作成が必須と考えた張田は、全ての営業所の平準化と新入社員に教える環境を整えることを目標に、マニュアル整備と動画作成を徹底して行なった。
その結果が目に見えて現れたのは、退職率の減少だった。『平準化された業務と良好な教育環境は、人材の定着に繋がる』ことを、身をもって体験した張田。この体験は、現在の仕事のベースにもつながっている。

そんな会社を退職することになったきっかけは、リーマンショックによる営業不振。
元々、入社1年目で産休と育休を取得したこともあり、10年はこの会社で恩返ししようと思っていた張田。
マニュアルも作り上げ、抱えていた仕事が徐々に片付いてきた頃、「13年も務めたしそろそろ辞めてもいいかな?と思っている時に、希望退職者の募集を知らされて。なんだか辞めてもいいよと背中を押してもらったように感じたんですよね」と、張田は退職を決めた。
退職後は、これまでの疲れを癒すように張田は一度足を止めた。
反抗期を迎える子どもと向き合う時間にしたり、今まで出来なかった習い事や資格所得に向けての勉強をしたり、2年間の休息で多くの知識と心の栄養を蓄えた。

2年後、充電が完了したかのように働きたい意欲が沸々と湧いた張田。
子どもの教育に興味があったことから、大手学習塾の経営希望者向けの営業マネージャーとして仕事を再開させた。
しかし、その仕事は張田が思っていたものとは大きく異なった。
教室が乱立し、生徒を取り合うという構図。
塾に通える子どもは金銭的に恵まれている子たちばかりで、自分の仕事は本当に子どもの教育につながっているのかと疑問を抱いた。

並行して、心の発達と児童養護への関心から大学で体系的に心理を学び、社会福祉の資格も取得した。

もっとバリバリ働きたい。
児童養護施設でのボランティアの傍ら、教育を別の角度から極めていこうと決心した。

エンジンがかかった張田は、人材教育のコンサル企業へ入社。
営業、講師、コンテンツ開発、管理職としてのマネジメントなど、事務以外の仕事は全て引き受けた。

商業施設に特化したコンサルや、企業のコンサルなど、様々な業種、企業を担当させてもらい、自分が一番楽しいと思えたのが人材育成や人材教育など、人にフォーカスしたことだった。

今後もこの業界で働いていきたいと思った張田は、キャリアコンサルタント2級の資格を取得。
フリーランスの人材育成コンサルタントとして、活動を始めた。

企業のコンサルティングにおける張田のスタイルは、新人研修から定期的にフォローアップし、評価者研修など、マネジメント側の研修や面談まで幅広い視点で行なうこと。
研修はあくまでもインプット、気付きの場であり、大切なのはそれがその後どう活かされているか、今何が必要なのかをそれぞれの立場の意見を聞き取って構築しているという。
現在、退職理由に多く上げられるのが、正当な評価をされなかったということ。張田はそうした社員の不満を減らすため、上司側と部下側それぞれと面談を行ない、相互理解と社員の定着に繋げている。
そんな手厚いコンサルティングが評価され、3年前からコンサルティングを続けている企業は全て現在も契約が続いている張田。

彼女のコンサルタントとしてのポリシーは、自分のスタイルを押し通さないこと。
「企業の社長や役員の方たちは誰よりも会社のことを見ていて、愛着があるんです。やりたいことやこだわりを持った方が殆どなので、要望には忠実に応えるようにしています。だからと言って、言いなりになる訳ではありません。そうしたやり取りの中で、やりたいことを実現しつつ、少し考え方を変えてみませんか?というような柔軟な提案を心がけています」と、さわやかに語ってくれた。

大学での講師も、社会に出る前から多くのことを身につけてあげられればという想いから始めた。学生の頃からビジネスの基礎知識や価値観が形成されていれば、社会に出た時に遅れを取ることもなく、新卒入社した社員の早期離脱を減らせるのではないかと考えている。

人材育成は今や、張田にとって生き甲斐ともいえる。
働くことが何よりもストレス発散に繋がると語るほど仕事に情熱を注ぎこむ張田は、これからも人材育成コンサルタントというフィールドで走り続けていくだろう。